英国IOMによる「HARNレポート」続き

HARNレポートのタイトルは「高アスペクト比ナノ粒子(HARN)はアスベスト繊維と同様な懸念を引き起こすのかどうか判断するための予備調査」。著者には、IOMのメンバー以外に、エジンバラ大学のDonaldson氏やネーピア大学のStone氏らも含まれている。アスベスト(産業繊維の1例として)の毒性に関する情報をレビューして、HARHの代表的な物質であるカーボンナノチューブ(CNT)と、物理化学的特性や有害性について比較するという内容。そこから出てきた「ファイバー・パラダイム」は次の3つのクライテリアからなる。

  1. 直径:繊毛のある気道を通れるほどに細くなければならない。空気力学的直径は長さには影響されない。
  2. 長さ:貪食の失敗などのメカニズムによる炎症を引き起こすほどに長くなければならない。
  3. 生体内残留性:溶けたり分解したりせずに肺の中に長く残留する必要がある。最大曝露限度を設定する際に重要となる。

そして一部のCNTはこのファイバー・パラダイムの要件を満たしていると指摘(「…病原性の繊維と同様の特性(直径、長さ、生体内残留性)を持つHARNが、同様な病変を持つであろう十分な証拠があると結論付けた」)。また、HARNであるかどうか見分けるためのフローチャートも提案(化審法の審査プロセスみたいだ)。最後に、優先されるべき研究内容が書いてあるのだが、これはあまりにも一般的。
Maynard氏はブログに感想として「健康や安全への懸念が示されてから17年も経っているのに、いまだに、解を見つけるどころか、正しい問いを探っている状態であることは驚きだ」と書いている。