欧州の動きを追っかけ

欧州での動きが早い。6月に欧州に2度行く予定なので基礎知識をつけておかないと!

新規食品(novel foods)に関する規制の改正案を採択

化粧品指令が採択された翌日の3月25日、欧州議会は、委員会提案の、新規食品(novel foods)に関する規制の改正案を修正のうえで、賛成658、反対15、棄権11で可決した修正のポイントは、この規制の範疇からクローン動物を除外したことと、ナノテクノロジーを利用した食品に対して特別なリスクアセスメントを要求したこと。「新規食品」は、1997年5月(法律ができた時点)以前に欧州であまり消費されていなかった食品と定義されていて、これまで20以上の「新規食品」が認可されている(リンク)。まずは全体的な点。

  • Recital(14)安全性評価は"precautionary principle"に基づくべき。
  • Recital(15a)動物試験を避けるために、この規制の目的で試験に脊椎動物を使うことは、最終手段としてのみ実施すべき。
  • Recital(16a)リスクアセスメントの中に、倫理的側面と環境への影響の側面を考慮すべき。

以下は、ナノに関する興味深い文言を列挙。

  • Recital(6b)ナノ特有の非動物試験方法を緊急に開発すべき。
  • Recital(6d)食品パッケージに含まれるナノマテリアルは、食品への移行限度を設定したうえで、認可ナノマテリアルのリストに加えるべき。
  • Article 3(cc)"engineered nanomaterial"は「100nm以下のオーダーの側面を1つあるいはそれ以上持つ、あるいは、内部か表面が、多くが100nm以下のオーダーの側面を1つあるいはそれ以上持つ個々の機能部分からなる、すべての意図的に生産された材料。これらには、100nmのオーダーよりも大きなサイズであるが、ナノスケールに特有の特性を保持している構造体、二次凝集体、一次凝集体を含む。」と定義される。
  • Article 6(1a)特定のリスクアセスメント手法が必要とされる生産プロセスが適用される食品(例えばナノテクノロジーを使った食品)は、特定の手法の利用が承認され、それらに基づいた十分な安全性評価を用いて個々の食品の使用が安全であると示されるまでは、認可リストに含められない。
  • Article 7(2d)ナノマテリアルの形態で存在するすべての成分は成分リストにはっきりと示されるべき。成分名のあとにカッコ付きで「ナノ」と書くべき。

Article 6(1a)の項目が特に重要だ。リスクアセスメント手法が確立されるまでは、ナノテクノロジーを利用した食品は新たに認可されることはないと言っている。現に、そういった手法はまだ確立されていないので、まずは手法確立が早急に求められるということになった。Friends of the Earth(Australia)はこのことをもって「事実上のモラトリアム」と言っている。

ナノマテリアルの規制的側面に関する欧州議会決議に向けての提案」

3月31日には、欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会で、スウェーデン緑の党のSchlyter氏による「ナノマテリアルの規制的側面に関する欧州議会決議に向けての提案」が、賛成21、反対14で採択された。ただし、このレポートは、あくまで動議という位置づけで、自主的な対策を求めるものであり、法的拘束力はない。提案の目的は、欧州委員会が2008年6月に出した、ナノマテリアルに関連する健康安全環境リスクは基本的に既存の法規制でカバーできるとする報告書「ナノマテリアルの規制的側面」に対して真っ向から反論するという点にある。
内容は多方面にわたっているが、おもしろいと思った点を以下に列挙。

  • 委員会に対して、ナノマテリアル利用に"no data, no market"の原則を適用するという観点から、すべての法規制を2年以内に審査すべき。
  • ナノマテリアルの製造者は"duty of care"を適用すべき(不法行為法の概念のようだ)。
  • 18か月以内にREACHを改正し、ナノマテリアルを登録(閾値はトンの代わりに、例えば表面活性)、曝露評価付きの化学物質安全性レポート、閾値に関わらずすべてのナノマテリアルの通知を組み込むべき。
  • 大気や水の排出基準値は、濃度ベースでなく、粒子数や表面積といったナノマテリアル特有ののメトリクスで補完すべき。
  • 委員会は、2011年6月までに欧州市場にあるナノマテリアルのタイプや利用についてのインベントリを作成し、公表すべき。同時に、これらの安全性についても報告すべき。
  • 消費者製品にナノマテリアルを使用している場合は消費者に、ラべリングでもって知らせるべき。うしろにカッコでナノと書くべき。
  • 誤解を招く広告がないように、「誤解を招く広告、比較広告に関する欧州議会・理事会指令」(2006/114/EC)を遵守すべき。
  • 委員会と加盟国は、ナノテクノロジーナノマテリアルを監視する責任のある永続的な独立欧州意思決定プラットフォームを早急に設立すべき。

科学公聴会を開催

欧州委員会は、2009年9月10日にブリュッセル科学公聴会を開催する。それに備えて次の3事項についてコンサルテーションを実施。関心のある人は専用ウェブサイトからコメントを送ることができる。締切は6月19日。