ナノテクノロジーの意味は欧米と日本で異なる。

 欧米ではナノテクノロジーは(当然であるが)新興技術の1つと捉えられている。だから、iPS細胞やジオエンジニアリングなんかと同じように、一般人の知名度は低いし、新興技術であるがために不確実性も多く、懐疑的な態度をとる人たちも多くいる。これは、新興技術に対する健全な態度である(ただし、米国では宗教が影響力を持つのでやや文脈が違ってくるが)。
 日本ではまったく状況が違う。まず、ナノテクノロジー知名度は非常に高い。通常、新興技術には比較的興味が薄い若い女性にもよく知られている。そして非常に好印象を持っている。このような事態を欧米の人たちにどのように説明したらいいのかずっと迷っていた。でも、日本では「ナノテクロジー」は、原子力技術、遺伝子組み換え技術というラインの先にあるのではなくて、マイナスイオンコエンザイムQ10ベータカロチンといった"Buzz Word"の系譜に並ぶ。すなわち、日本では(少なくとも国民の中のイメージでは)ナノテクノロジーは新興技術の1つではない。