機内での子供の安全性とリスクトレードオフ

Freakonomicsで紹介された話。孫引き。機内での幼児の安全性のためには、親の膝の上よりも、席にシートベルトで固定した方がよい。それはそうだ。でもそうすると幼児にも1人分の料金が発生することになる。そうすると、飛行機を使わずに、クルマを利用して移動するケースが増えるだろう。クルマの移動の方が、距離当たりの幼児の死亡リスクは相当高いため、機内での子供のシートベルト強制がかえって子供の安全性が損なわれるという話。
似たような話はイギリスでも聞いた。鉄道安全のために投資をしすぎると運賃に反映され、高い鉄道運賃を避けるためにクルマ通勤が増え、かえって事故死亡者数を増やしてしまうという仮説。交通経済学者が国会で述べたと聞いて、勇気あるなあと思った。でもこういう議論は避けてはいけないと思う。
また、飛行機からクルマへの代替はアメリカでは9.11テロのあと実際に起きた。9.11テロのあと、飛行機の利用を避けた人々はクルマで移動した。その結果、クルマの走行距離の増加と、交通事故死者の増加だった。Gigerenzer(2006)は、さらなる航空機テロを避けようとして逆に自動車事故で亡くなった人が1595人いたと推計した。これはハイジャックされた4機で亡くなった265人をはるかに上回る。ちなみに、スペインの列車テロのあとにはそういった代替は発生しなかったようだ(論文があったと思うけど失念)。JR西日本の事故のあと、交通事故死者が増えているかどうかチェックしてみたけど微妙な感じ。たぶん増えてない。