論文本体その2:ナノ粒子への曝露によって労働者が死亡したとする論文

論文に載っている基礎的情報をメモ。

  • 印刷工場の同じ部署で働いていた7人の若い女性患者は、5〜13ヶ月の曝露ののち2007年1月から2008年4月にかけて北京Chaoyang病院を訪れた。彼女たちはその前に地域の病院において複数の胸腔穿刺、抗生物質、抗結核薬、メチルプレドニゾロンプレドニゾロンを含む治療を受けていた。
  • 臨床検査は、細菌検査、ウィルス検査、免疫テスト、イメージング、機能検査、気管支鏡検査、経気管支的肺生検(TBLB)、胸腔鏡検査、ビデオ補助下胸部手術(VATS)、病理検査(胸膜、胸水、肺組織の光学顕微鏡とTEM観察)。
  • 労働現場の調査は、中国CDC、北京CDC、地域CDCや医者によって実施された。患者が扱っていたペースト材料と局所排気装置(5か月間故障中)に蓄積していたダスト粒子は、GC/MSによって分析された。
  • すべての患者は、病因調査のため、および、症状緩和のために、胸腔穿刺を受けた。3人は胸水の滲出の閉鎖ドレナージ手術を、2人はVATSを実施。抗生物質や補助療法が用いられた。
  • 現場の面積は70立方メートル以下で、ドアが1つ、窓はなく、ボードに噴霧し、加熱し、乾燥するための機械が1台置いてある。3つの散布ノズルを持ち、1つ排気装置を持つ(これは発症前5ヶ月間故障したまま)。ペースト材料は、ポリアクリル酸エステルの象牙色のソフトなコーティング混合物。
  • 8人の労働者(患者の7人に加えて男性1人)が2グループに分かれて8〜12時間ごとのシフト。彼らは、上記ペースト材料をスプーンで機械に移し、それは100〜120キロパスカルのもとで、ポリスチレン(PS)ボード(有機ガラス)の上に自動的に噴霧される。この製品は、印刷産業や加飾産業で利用される。PSボードは75〜100℃に加熱され乾燥させられ、そのプロセスで煤煙(smoke)が発生する。これは排気装置で除去される(注:故障していた)。ペースト材料(コーティング材料)は1日6kg使用され、PSボードのサイズは0.5-1?から5000?まで様々。労働者はすべての作業を行っていた。
  • 外気が寒かったので発症前の5か月間はドアは閉じられていた。労働者はみな農家であり、産業衛生に関する知識はなく、唯一の個人用保護具は、たまに装着する綿製のガーゼのマスクのみ。患者らによると、噴霧の際にしばしばflocculi(?)が発生し、顔や腕が痒かったたとのことである。室内の空気はよどみ、流れは非常に遅かった。
  • 8人の労働者のうち男性の1人は曝露器官が3ヶ月と短く、自覚症状はなかった。患者の家族や他部署の労働者には同様の症状は見られなかった。
  • ペースト材料はGC/MCによって成分が分析され、その結果、ポリアクリル酸エステル以外に、butanoic acid, butyl ester, N-butyl ether, acetic acid, toluene, di-tert-butyl peroxide, 1-butanol, acetic acid ethenyl ester, isopropyl alcohol, ethylene dioxideが検出された。電子顕微鏡では、ペースト材料とダスト粒子の双方から、直径30nm以下のナノ粒子が見つかった。