今度はナノ粒子とアルツハイマー病を結び付ける報道

ことの発端は、英国Ulster大学が8月24日に「画期的な研究がナノ粒子とアルツハイマー病を結び付ける」というプレスリリースを発表したことだった。これを受けて、例えば「サンスクリーンがアルツハイマー病につながっているかもれないと専門家が言う」とか「サンスクリーンがアルツハイマーを引き起こすかも」という見出しで報道された。Ulster大学のプレスリリースの意図は、EUから3年間で35万ポンド(約5000万円)の研究予算を獲得したことと、この研究プロジェクトがいかに重要なものであるかということを宣伝するものであり、研究結果についてのものではない。
NeuroNanoプロジェクトの一部と書かれているが、NeuroNanoは2009年7月に終了なので、継続予算という位置づけなのかもしれない。さすがにこれはマズイと思ったのか、Ulster大学のプレスリリースの見出しは「ナノ粒子とアルツハイマーに関する画期的な研究」にこっそり変えられた(2002 Science情報)。ちなみにぼくが日本時間8月26日午前9時にプリントアウトした紙の見出しは「新しい研究がサンスクリーンとアルツハイマー病の間の結び付きを調査する」となっているので、少なくとも2度変わったのだろうか?研究自体はおもしろそうだし、結果も見てみたいが、研究を始める前のPR活動が煽り報道の原因になってしまったケースと言える。研究対象は、サンスクリーンの中の二酸化チタンとディーゼル燃料添加物である酸化セリウム。それらへの曝露と、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患との関連を探るようだ。ナノ粒子が脳に移行するルートには2種類考えられていて、1つは嗅神経を通って脳に行くルートで、もう1つは血液脳関門を通過するというルート。前者についてはOberdorster et al.(2004)Oberdorster et al. (2006)が有名だけど、げっ歯類ではありえてもヒトでありうるかどうかは分かってない。