欧州理事会で化粧品規制」が採択。

11月、欧州理事会で「化粧品に関する欧州議会欧州理事会の規制」("REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on cosmetic products")が承認された。前文はpdfで読める。欧州議会で採択されたときに書いた内容とだいたい同じだけどもう一度まとめておく。
1点だけ修正しておく。これは、EU化粧品指令76/768/EECにとって代わるものだけど、今回は「規制(regulation)」だ。「指令(directives)」はその後各国での法制化が必要だけど、「規制」はEUレベルで承認されると自動的に全加盟国に適用される。今回は後者。

Article 2「定義」

(k)で"nanomaterial"を定義。"nanomaterial"とは「不溶性であるか生体内残留性があり、意図的に製造された材料で、1つ以上の外の側面、あるいは内部構造が1〜100ナノメートルのスケールであるもの」とされている。また3節には、国際機関の定義の変更などに応じて更新されると書かれている。

Article 13「通知」

市場に出す前に欧州委員会に(電子的に)提出しなければならない事項の(f)に「物質のナノマテリアルという形での存在」が挙げられており、具体的には、
(i)化学物質名(IUPAC)や本規制の"Annexes II〜VI序文"の(2)に挙げられた他の記載方法を含む同定情報
(ii)合理的に予想できる曝露条件

Article 16「ナノマテリアル

ナノマテリアルを含むすべての製品は、ヒト健康の高レベルの保護が確保されなければならない」という言葉で始まる。ただし、Article 14ですでに規制されている顔料、UVフィルター、保存料には適用されない。Article 13の「通知」に加えて、ナノマテリアルを含む化粧品は発売の6か月前に欧州委員会に電子的に通知することが求められている。欧州委員会に通知されるべき情報は最低限以下のとおり。
a)ナノマテリアルを特定するための情報(化学物質名を含む)
b)粒子サイズ、物理化学的特性を含むナノマテリアルの仕様
c)1年間に販売予定の化粧品に含まれるナノマテリアルの量の推計値
d)ナノマテリアルの毒性学プロファイル
e)化粧品カテゴリーに関連するナノマテリアルの安全性データ
f)合理的に予測可能な曝露条件
欧州委員会ナノマテリアルの安全性について懸念を持った場合はすぐにSCCSに意見を求めなければならない。またその情報を公開する。SCCSは委員会の要求から6カ月以内に意見を公表すべき。必要なデータが欠けていると判断した場合は、委員会は期限を決めてデータの提供を要求する。追加データが得られたのち6カ月以内にSCCSは最終意見を公表する。
また、欧州委員会は、本規制施行後48カ月後に、化粧品に使用されているすべてのナノマテリアル(顔料、UVフィルター、保存料も含む)のカタログを、合理的に予測可能な曝露条件とともに公表し、定期的に更新する。欧州議会と理事会に年間ステータスレポートを提出する。最初の報告書は本規制施行後54か月後。新規ナノマテリアル、通知の件数、ナノ特有のアセスメント手法やガイド、国際協力プログラムの進捗などを報告する。
委員会は定期的に本規制のナノマテリアルを含む条項を、科学の進歩に照らしてレビューし、必要があれば、適切な改正を提案すべき。最初のレビューは本規制施行後「5年+42カ月」。

Article 19「ラべリング」

ナノについては「ナノマテリアルの形で存在するすべての成分は、成分リストにはっきりと示されなければならない。それらの成分の名称のあとにカッコ書きで「ナノ」と記すこと」と書かれている。

追記1)施行時期について

Official Journalに掲載された20日後に有効となり、42ヶ月後に施行される。ナノマテリアルに関するくだりは、施行が3年後となっている。

追記2)この規制の影響について

もしかしたらサンスクリーン(二酸化チタンや酸化亜鉛)は適用除外なのかもしれない。Article 16のところに書いたように、「ただし、Article 14ですでに規制されている顔料、UVフィルター、保存料には適用されない。」という文言がある。このArticle 14では、例えばUVフィルターについては、Annex XIに「化粧品に使用が許可されているUVフィルターのリスト」があって、27番目に「二酸化チタン」がある。そのため、もしかしたら、サンスクリーンに利用されているナノスケールの二酸化チタンは適用除外なのかもしれない。同様に、顔料についても、Annex IVの143番に「二酸化チタン」、144番に「酸化亜鉛」がある。