欧州委員会がリスク評価アプローチの改善を検討開始

欧州委員会の3つの委員会(SCCS, SCHER and SCENIHR)が共同で、リスク評価アプローチの改善に向けたワーキンググループを立ち上げた(pdf)。リスク管理側のニーズをうまく汲み取ることと、リスク問題についての効果的なリスクコミュニケーションを実施するため。
ここで書かれている問題意識がずっとぼくが考えていることとほとんど一緒なのでざっくり訳して引用してみた。さあ、どんな回答が出てくるんだろう?報告書は2011年6月に発表予定。

健康および環境リスク評価への現行アプローチでは、リスク管理者や政策決定者が目指す保全目標とは直接関係がないようなエンドポイント、生体応答、その他のテクニカルなパラメータの検討に基づいた、様々なテクニカルなリスク表現が使用される。


他方で、(リスク評価者に)問題を提示する際に、リスク管理者が適切なフレームワークをいつも提供するわけではない。特に、リスク評価者がアウトプットを(リスク管理者が)簡単に利用できて、誤解の余地がないような形で手渡すことができるように政策目標を特定するとは限らない。


その結果、リスク評価報告書で使用される表現を解釈することは、リスク管理者や一般人にとって難しいものとなり、誤解や歪みのもととなり、コミュニケートしづらい。


そのうえ、リスク評価報告書は、リスク、および、リスクとベネフィットを適切な指標で表現することが可能な場合でも、対象とする特定のケースで生じるリスクベネフィットのバランスの問題に、直接的、体系的、透明な形で言及されることはめったにない。


最後に、リスク評価手法・手続き・結果の表現が、リスク管理者や政策決定者が意思決定に必要な情報である、費用便益、あるいはより一般的には多基準(マルチクライテリア)評価と連携することはめったにない。


このプロセスでの重要な課題は、リスク評価やリスク管理プロセスにおいてパラメータを比較可能で意味のあるやり方で重み付けることができるように、リスク・ベネフィット・コストを計測し定量化するためのアプローチや方法論を確立&標準化することが可能かどうかである。


そういったアプローチが欠けている結果、標準化されていないパラメータ(例えば潜在的健康ベネフィット vs. 社会経済的コスト)の比較が、使用される仮定によって大きく変わってしまい、政策形成におけるそれらの比較の価値を制限してしまう。


リスク評価者はしばしば、現行プロセスから出てくるテクニカルなパラメータ(例えば、安全マージン)とリスク管理者の問い掛けの間のギャップを、リスクの「点数化」といった表現を使って自分たち自身で「解釈」することで埋めようとする。しかし、あらかじめ決められたり同意されたりしたスキームの外側でリスク表現を組み立ててしまうと、その役割についての誤解や混乱が起こりうる。