英国上院科学技術委員会の報告書「ナノテクノロジーズと食品」のまとめ。

2回に分けて長々と書いてしまったけど、特に印象に残った点は以下のとおり。

  • 消化器官に入ったナノマテリアルの有害性に関連しそうな特性として、サイズ、溶解性と残留性、化学的&触媒的反応性、形状、抗菌作用、凝集状態を挙げたこと。
  • 吸入曝露したナノ粒子の多くは、消化管に移行しているという指摘(これは忘れがち。Donaldson氏のコメント)。
  • RCEP(2008)に続いてここでも毒性学者の不足が指摘されている(もっと不足している日本は大丈夫か?)
  • 食品業界が研究開発中のナノ材料情報をFSAに提供しそれを非公開のデータベースとすることを義務付ける勧告。
  • ナノ材料の定義は「100nm」といった恣意的なカットオフはやめて、1000nm未満のすべてのマテリアルが検討対象となるような形で「ナノスケール」という言葉を使うべきと勧告。
  • 人体への作用の仕方が変化するという意味での「機能性の変化」を、ナノ材料か、それよりも大きい形態であるか区別するための因子とすべきと勧告。
  • ナノ粒子は必ず粒径分布を持つため、何割くらいがナノスケールに該当する場合は「ナノ材料」とみなされ規制の対象になるのかガイドラインの明記すべきと勧告。
  • ナノテクの発展速度が早いことから、FSAは3年ごとに法規制ギャップの有無をレビューすべきと勧告。
  • FSAは、EFSAによって(新規食品等に)認可された、市場で購入できる、ナノ材料を含む食品や食品包装のリスト(一覧表)を作成・公開・維持管理することを勧告。
  • 英国政府は、食品部門におけるナノテクノロジー利用に関する一般人の考え方についてのアンケート調査を定期的に委託すべきと勧告。
  • 食品産業界が情報提供に消極的な現状を批判。過去の失敗から、情報公開と透明性こそが重要と指摘。
  • 情報提供といっても「一括でのラベリング」は間違った情報を伝えることになるので推奨しない。(上記の)ナノ材料利用商品リスト(一覧表)が望ましい。