報告制度・法規制改正・リスク評価の展望

ナノテク産業協会(Nanotechnology Industries Association: NIA)が便利な展望記事を書いているのでそこからメモ。以前書いた関連ブログ記事も参照しつつ。

ナノ材料の報告義務付け

米国EPAは今年の終わりか来年初めに、工業ナノ材料のデータ収集&獲得を義務付ける規制を導入する方向で検討中。その際、TSCAの化学物質の定義(分子的同一性)を見直す。
フランスも、環境グルネル第2法案第73節にもとづき、工業ナノ材料の報告を義務付ける制度を検討中で2010年中には始まりそうだ(2009年1月24日のブログ記事参照)。
ノルウェーでも、汚染管理局(SFT)が、化学製品中のナノ材料の利用についての強制的な報告制度の導入を発表した(2009年6月のニュース記事参照)。
オーストラリアでも、2009年11月にNICNASから提案された「工業ナノ材料の規制改革提案」(pdf)に、強制的な報告制度と強制的な通知&評価制度が含まれている。
カナダでは、2008年6月のOECD会議で「強制的な報告制度に向けた調査を開始」と宣言してからずいぶん経つけどまだ調査結果が公表になってないようだ(2009年2月2日のブログ記事参照)。

ナノ材料を扱うための法規制改正

オーストラリアの提案が通れば、初めてナノ材料に合わせた法規制の改正が行われる事例となる。
欧州では、製品レベルでは、化粧品規制の改正が通り(2009年12月8日ブログ記事参照)、新規食品規制が第二読会を待っている段階(2009年4月24日のブログ記事を参照)。この先は、殺生物剤(バイオサイド)指令、欧州RoHS指令、欧州WEEE指令の改正において、明示的に「ナノマテリアル」が扱われる可能性が高いとのこと。
米国では、上院で1月、「ナノテクノロジー安全法案2010」が提案された(リンク)。これはFDAの扱う製品をターゲットしたもののようだ。

リスク評価が始まりつつある

2009年から実際に、ナノ材料を用いた製品を対象としたリスク評価が出てきつつある。これらは2009年後半の2つの会議でプレゼンされた。1つはOECDのWPMNとSRAが共催したワークショップ「規制文脈におけるリスク評価」。もう1つは、欧州委員会のDG SANCOによる"3rd Annual Nanotechnology Safety for Success Dialogue Workshop"。両者とも、ナノスケールの二酸化チタン、カーボンナノチューブ、銀ナノ粒子が取り上げられた。
※これらにうちらが出した、リスク評価書中間報告版も加えてくれればよかったのに!