フォーキャスト:2nd World Congress on Risk参加報告(その2)

6月10日の全体集会は「セキュリティ、ガバナンス、そして新興の脅威の管理(Security, governance, and the management of emerging threats)」として、バイオセイフティとナノテクノロジーの話があった。ナノテクノロジーの話をしたのは、ライス大学のVicki Colvinさん。面白いと思った点はまず、ナノ材料の安全対策として、通常の排出&曝露抑制対策と並べて、"Safety by design"(設計によって安全にする)を挙げている点だ。ナノ材料は、通常の化学物質と違って、ちょっとした製法やコーティングの違いによって毒性が大きく異なる。そのため、物質自体の性質を変えるというのも対策たりうるのだ。確かにライス大学はそういう研究をけっこうやっている。ただこういうのは大量生産とのトレードオフが生じたりしやすいだろう。もう1つ面白かった点は、「アセスメント(assessment)」という言葉をもう旧来の方法(old way)に分類し、これに対して新しい方法(new way)は「フォーキャスト(forecast)」だと主張している点だ。日本語では「評価から予測へ」となるのだがちょっと分かりにくい。彼女が言いたいのは、できあがった(場合によっては使い始めた)物質の性質を調べることがアセスメントで、例えばまだ合成前の段階でその毒性や物理化学的特性を予測するのがフォーキャストなんだと思う。フォーキャストの特徴は、様々な多数の材料、様々な用途、潜在的な新しいハザードで、そのための技術は、予測的モデリング(predictive modelling)とリスク予測(risk forecasting)だという。思想的には、われわれが言うところの、シングルリスクワールドからマルチプルリスクワールドへ、と似ているが、予測的な側面をもっと強調した感じだ。