欧州FP7の研究プロジェクト"ENPRA"の第1号ニュースレターを読む

2009年5月に始まった、ENPRAは、正式名称を「工業ナノ粒子のリスク評価(Engineered NanoParticle Risk Assessment)」と言う。かなりストレートな命名だ。エジンバラInstitute of Occupational Medicine (IOM)の、Computational Topxicology部門のトップであるLang Tran氏がリーダー(リンク)。3年半で370万ユーロ(約4億5千万円)。15の欧州の機関と6つの米国の機関(EPA、NIOSH、NIH-NIEHSを含む)と連携している。研究内容は、in vivo, in vitro, in silicoを駆使して、工業ナノ材料の環境・健康・安全(EHS)研究を実施する。
現在実施しているのは次の2点。配布したナノ材料の種類や、どようなポリシーでどのような方法で分散を行うことにしたのか気になる。

ENPRAの目的は以下のとおり。

  • 観察された毒性に対するクリティカルな物理化学的特性の特定
  • 観察された影響の基礎にある細胞あるいは分子レベルのメカニズムの探索
  • in vivo試験で検証可能な、ハイスループットな代替毒性試験として用いることができるシステムの開発
  • 新規材料のハザードを予測するために構造活性手法の利用
  • in vitroでの結果をin vivoや他の関連する職業曝露や消費者曝露に外挿
  • すべてのデータを「証拠の重み」としてリスク評価に取り込み

彼らは採用するアプローチを「曝露-用量-反応」パラダイムと呼んでいる(Figure 1)。そして、標的は5つ(肺、肝臓、腎臓、心臓血管、発達)、エンドポイントも5つ(酸化ストレス、炎症と免疫応答、遺伝毒性、線維毒性、発達毒性)で、これらをin vitroで評価したいと考えている。もちろんin vivoでの検証を行う。ここでの曝露評価は、曝露してから毒性発現までを、PBPKモデルやQSARのような方法でつなげることを指す。さらに決定論的ではなく確率論的なモデルに拡張し、リスク評価を行う。

2009年11月26日にはパリで、最初の「ENPRA専門家パネル会合」が開催された。年2回開催され、20名の専門家が集まった。2010年4月14〜15日には、イタリアのIspraで、最初の「ENPRAステークホルダー情報ワークショップ」が開催された。ここでいうステークホルダーとは、米国の参加パートナー機関、FP7の他のプロジェクト関係者、ベンチャー投資家、中小企業、EUの加盟国代表、欧州委員会OECD代表など。その前日には、第2回の「ENPRA専門家パネル会合」も開催される。そして、5月30日から6月1日には、エジンバラで最初の年1回の「ENPRAプロジェクト会合」が開催される。これはクローズド。そして翌日からは同じ場所で、「ナノトキシコロジー2010」が開催される。6月2日〜4日に開催され、詳細なプログラムはまだ穴だらけだけど、セッションはナノマテリアルの種類ごとに組まれるようだ。おもしろそう。招待されている専門家には、ロチェスター大学のOberdorster氏、エジンバラ大学のDonaldson氏、PENのMaynard氏ら豪華な顔ぶれ。