2008-01-01から1年間の記事一覧

環境税についての覚書

環境省が提案している環境税は2004年以来ずっと「炭素1トンあたり2400円」だ。ガソリンを1リットル消費したときの炭素排出量が643gなので、炭素1トン排出するにはガソリンを1555リットル消費する必要がある。ガソリン1555リットルで2400円ということは、ガソ…

自主的取組に排出量取引を組み込むという方法

排出量取引に認証制度:政府、国内実験を来月開始(日経新聞2008年9月10日) 9月9日に「地球温暖化に関する関係閣僚会議」で温暖化ガスの国内排出量取引の実験を10月から始めることを確認したそうだ。これは欧州なんかの排出量取引とは似て非なるもので、今…

"proactive"なリスク評価

チューリヒで7日から10日まで開催されているNanoTox 2008Second International Conference on Nanotoxicologyの最後のセッション(No.9)は、"Ecotoxicology & Proactive Risk Assessment"というタイトルが付いている。注目は、"Proactive Risk Assessment"…

Maynard氏のブログ追っかけ:IANH立ち上げの巻

9月9日のエントリは、International Alliance for NanoEHS Harmonization (IANH)(ナノの環境健康安全研究の調和のための国際同盟)の立ち上げの話。タイトルは"Nanotoxicologists sele-assemble"で、これはもちろんナノ粒子の自己組織化の話と、世界中のナ…

NanoReg Newsの投票では肯定的な評価がおよそ半数

NanoReg Newsが、7月28日に締め切られた米国EPAのNMSPのBasic Programへの評価を尋ねるアンケートをやっている。Basic Programは結局、20組織から90のナノ材料の情報が提出されたようだ。ぼくは72人目の投票者だった。これまでのところの結果は次のとおり。 …

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ:付加価値と付加リスク

Maynardさんは8月24〜29日までギリシャのThessaloniki(ブログではスペルがちょっと間違ってる)で開催されたEuropean Aerosol Conferenceで講演をやってきたようだ。プログラムを見ると、28日の朝のに"Developing responsible nanotechnologies: An Aerosol…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ:8月21日

ナノブレイク明けのエントリーのテーマは消費者製品。PENの消費者製品インベントリが更新されて製品数は800を超えた(日本版は更新が最近滞ってるんだけど、実際新製品が少ないような気がするのは気のせい?)。米国版で興味深い新製品として挙げられている…

今度はケンブリッジ市の動き

7月28日、マサチュセッツ州ケンブリッジ市の議会はナノ材料の健康安全政策に関する勧告を採択。カリフォルニア州バークレー市(2006年12月に条例を制定)に次いで、地方自治体レベルでナノ材料に関するアクションを起こした米国で2番目の都市になった。ただ…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ:3週間のナノブレイク

7月20日はナノテクへの12の教訓の話 2001年に欧州環境庁(EEA)は専門家パネルに14の過去の事例をケーススタディとしてまとめ、そこから12の"late lessons"(遅ればせの教訓)を導き出すという作業を委託し、結果は報告書"Late lessons from early warnings:t…

米国FDAに久々の動き:公聴会を開催

米国食品医薬品局(FDA)が2007年7月にタスクフォース報告書(link)を発表して以来の動きがあった。2008年9月8日に公聴会(public meeting)を開催することを官報(pdf)とウェブサイトに発表。タスクフォース報告書に書かれた勧告を実施するにあたってFDAにと…

ミネソタ州立大学のKuzma氏の仕事

米国の農務省(USDA)には、リスク評価と費用便益分析室(Office of Risk Assessment and Cost Benefit Analysis: ORACBA) というところがあって、経済学者もそこで働いている。そこが主催のリスクフォーラムで、5月13日、ミネソタ大学のJennifer Kuzma氏が…

欧州の新しいプロジェクト"Framing Nano"

欧州委員会によって資金提供されているFP7プロジェクトの1つ。ナノテクの責任ある発展のためのガバナンス枠組みを検討する場となる。場当たり的な対応ではなく、ガバナンス枠組みとしてあるべき全体像を検討するというアプローチだ。ガバナンス枠組みの検討…

米国EPAのNMSP基礎プログラム、最後の追い込み!

28日(月)の締め切りを前に、7月24日時点の最新参加状況(EPAのNMSPサイト)。基礎プログラムへの参加は9社で、68種類のナノ材料をカバーしている(9社のうち1社は匿名)。 DuPont Nanophase Technologies Corporation Nantero(日本語サイト) Office ZPI…

重要そうなのでJing et al.(in press)の要旨を訳してみた。

Maynard氏がブログで取り上げた論文。アグリゲート(aggregate)とアグロメレート(agglomerate)はどう違うんだっけ?いつも忘れてしまう。Maynard氏はあまり区別してないように思ったんだけど、この論文は厳密に区別してる。だったら、de-agglomerationだ…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(リアルタイムに復帰)

7月17日のテーマは"Wysinwyg"、つまり"What You See Is Not What You Get"(あなたが見ているものはあなたが得るものではない)。ナノ文脈で言うと、がんばって計測してモニターしてキャラクタライズしても、その後、曝露したり、健康影響を引き起こしたりす…

EPAがVSLの公式値を下げたというAP記事

環境保護庁(EPA)が確率的生命価値(VSL)の公式値を下げたらしい。Associated Pressが記事を配信したおかげであちこちのニュースサイトに掲載されている。基本は、"An American Life Worth Less Today"(Timeなど)という見出しだけど、msnbcは独自に、"How…

業界団体からNMSP支持の共同声明

米国EPAの自主的報告制度であるNMSP(Nanoscale Materials Stewardship Program)の基礎的プログラム(Basic Program)への参加の締切日(7月28日)を前に、7月11日、3つの業界団体(あるいは団体内の組織)からの支持声明なるものが発表された。その中の興…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(やっと追いついた!)

6月28日は銀ナノ粒子は本当に消えていたという話 2007年12月15日のブログ「クマのベニーちゃんと消えたナノ粒子の件」でMaynardさんは銀ナノ粒子を抗菌剤として使ったクマのぬいぐるみからナノ表示がなくなったことを指摘していた(ここでの解説)。ところが…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(まだ続く)

6月13日は合成生物学(Synthetic biology)とハッカー文化(hacker culture)の話 なぜハッカーかと言うと、合成生物学はいわば生物学版のハッカーだということ。そしてまさにハッカー文化が浸透しつつある。そうすると必然的に、社会的・倫理的問題が生じ、…

ナノ会議とポータルサイト

ナノカンファレンスコム NanoConferences.comはナノ関連の会議を探すのに便利。 Nano Risk Analysis Workshop 2008年9月10〜11日にワシントンDCで開催。SRAのEmerging Nanoscale Materials Specialty Groupが主催するワークショップ。討議に基づいてホワイト…

DuPontのNano Risk Frameworkのグローバル展開

DuPontとEnvironmental Defense Fund (EDF)は7月9日、Nano Risk Frameworkの中国語訳、スペイン語訳、フランス語訳を公開した。プレスリリースによると、フレームワークの最終版が出てからの1年間に、業界団体(American Chemistry Council's Nanotechnology…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(続く)

5月31日は新規ハイブリッドナノ材料の話 Maynard氏がユニークなところは、ナノのリスクだけでなく、ベネフィットもバランスよく語ること。両方の最先端を話すことができる人材はなかなかいない。今回取り上げられたのは、Nano Letter誌のオンライン版に掲載…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(もうちょっと続く)

5月17日はデカップリングの話 デカップリング(decoupling)はこれからナノテクのガバナンスを考える上でとても重要になってくる概念だ。社会に対して売り込んでいく際には「ナノテクノロジー」という括りは有効だった。ブログではこれを"grand idea"と言っ…

Andrew Maynard氏のブログ追っかけ

5月2日は銀ナノ粒子の話 PENのインベントリでは明記されている材料の中で銀ナノが最も多い。ちなみに日本版では白金ナノコロイドやフラーレンが多い。銀ナノ粒子をめぐっては4月に2つの興味深い動きがあった。この日のブログでは両方が取り上げられている。 …

しばらく忘れていたAndrew Maynard氏のブログ追っかけ

前回は4月13日分(間違って12日って書いてるけど)までだったので続きをぼちぼち。グアダラハラに行く飛行機の中で読んだままになってた。 4月18日はナノテクリスク研究予算の話 NNIは2008年2月に発表した戦略(Strategy for Nanotechnology-Related Environ…

「生命の価値」はやっぱりまずいと思うというパブコメを提出

国土交通省の「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」改訂案に意見募集していたので、メールで以下のような意見を出してみた。 第2章 第5節 第2項(2)人的損失額、について意見を述べます。 「支払意思額による生命の価値」という言い方は、不必要…

物理化学的特性、in vitro試験、in vivo試験をつなげることに成功したという話?

PNASに出たところの論文。ニュース記事だけ読むとすごいことが書いてある。とりあえずアブストを翻訳。物理化学的特性、in vitro試験、in vivo試験をそれなりにつなげることに成功したという話らしい。 Shaw, S. Y., Westly, E. C., Pittet, M. J., Subraman…

自発的な報告制度:米国と英国のその後

米国EPAが今年1月に開始したNMSP(Nanoscale Materials Stewardship Program)の基礎的プログラム(Basic Program)への参加の締切日である7月28日まであと1か月ちょっととなった。これまでに提出したのは3社(DuPont, Office ZPI(※), 匿名の事業者)だけで…

とうとう出た企業向けナノリスクコンサル「ナノリスクチェック」

工業ナノ材料を生産したり使用したりする企業にとっては様々なリスクが懸念される。製品によって何らかの健康被害が生ずるというリスクはもちろん、直接そんな事態がなくても、法規制ができて材料や製品が売れなくなる事態だって十分考えられる。そんなこと…

REACHにおいてCarbonとGraphiteが対象物質に

6月9日(月)のEUの関係者の発言によると(nanowerk記事)、欧州委員会では前週、これまで免除規定であるAnnex4(物質固有の特性のためリスクは最小限であることが十分な情報により示されているもの)に含まれていた「炭素」と「グラファイト」を免除規定か…