リスク

日本での動き

欧米の人と話しても何もないのでしゃべるネタがなかったが、これまで比較的穏やかだった日本でも2008年に入り俄かに動き出した。英国や米国でのこれまでの議論がますます参考になるだろう。まずは世間の「ナノテク認知」にマイナスに働きそうなネタを列挙。 …

新型インフルエンザのハザードとリスクの大きさメモ

小説・ドラマ・映画 日本人の間で新型インフルエンザのリスク認知が上がってきているかもしれない。国立感染症研究所の岡田晴恵氏が小説「H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ」も含めて立て続けに本を出版し、1月にはNHKテレビで「シ…

Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting報告(その4)

ここはナノの話。様々なナノ材料を対象に、欧米の様々な研究機関から、リスク情報が不足している中でなんとかして簡易なリスク評価を行うための様々なフレームワークが提案され、製品や用途レベルでの適用が試みられ始めている点が印象的だった。物質を対象…

Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting報告(その3)

2日目午前いろいろ この日のplenaryはパスして、1つ目のセッションT2-B「リスク政策への観点:トレードオフ,累積的リスク,分配面への影響,専門家の見解」に参加。座長は、OMBを退職して、再び学術界に戻ってきたJohn Graham氏。最初の報告はAdam Finkel氏…

Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting報告(その2)

EMNMSのミーティング 1日目のお昼にはSpecialty GroupのBusiness Meetingsがあり、メンバーになっている"Emerging Nanoscale Materials(EMNMS)"に参加した。このグループの世話人は[www.cadmusgroup.com/:title=Cadmus Group]のJo Anne Shatkin氏。彼女はも…

Society for Risk Analysis 2007 Annual Meeting報告(その1)

米国San Anotonioで開催。暑かったり寒かったりしたが会場内は常に冷房が効いていて寒かった。冬なのに。でもSRAの年会自体は昨年あたりからとてもおもしろくなったように思う。Kimberly Thompson会長の努力のおかげだろう。次期会長には、Grahamとの共著"Ri…

SRA2007予習その4

Specialty Groupの年末活動報告より,2回目は"Dose Response"(用量反応).世話人はDale Hattis氏.毒性影響の個人差に関するデータベースを作成している. 目指している方向は,1)確率的であり,2)作用機序(mode-of-action)に基づく用量反応関係の評価だ…

2007 SRA Annual Meetingの予習その3

SRAのSpecialty Groupの1つ「意思決定解析とリスク(Decision Analysis and Risk: DARSG)」の世話人はLinkov氏。彼は"Multi-Criteria Decision Analysis"(MCDA:多基準意思決定解析)の支持者。最近はナノ材料のリスク評価・管理を研究している。DARSGも彼…

保険会社のリスク計算の客観性は?

保険会社にとってはナノテクノロジーのような新規リスクがどの程度のものであるのかは経営上とても重要な事項だ.だからSwiss Re社のような大きな保険会社は早い時期からナノテクノロジーのリスクに大きな関心を示していた.新規技術は保険会社にとってビジ…

日本でも法規制ギャップ調査が進行中・・・のはず.

首相、消費者重視アピール 安全確保で法令総点検指示へ(産経新聞) しばらく前のニュース記事だけど,これこそまさにまさに「法規制ギャップ調査」だ.いちおう「年内にとりまとめる」とあるので楽しみだ.「点検の対象は食品、消費者、商取引、輸出入、建…

2007 SRA Annual Meetingの予習その2

12日のPlenaryは昼食を食べながらの"Nudge Nudge, Say No More?".どうもこの言葉はモンティ・パイソンからの引用のようだ.ゲストは今大会一番の大物,Chicogo大学ロースクール教授のCass R. Sunstein氏.タイトルは「リバタリアン・パターナリズムは矛盾し…

2007 SRA Annual Meetingの予習その1

米国San Antonioで12月9〜12日まで開催されるSociety for Risk Analysis 2007 Annual Meetingの予習を開始.まずは毎年充実しているPlenary Sessionの顔ぶれをチェック. 10日朝のテーマは"Get Smart"で,神経科学者のJoseph LeDous氏と心理学者のElke U. We…

タミフルが下水処理場を素通り

インフルエンザ治療薬であるタミフルが通常の下水処理施設では除去されず,そのことが耐性菌を招くことにつながるのではないかと指摘する論文,「抗ウイルス剤オセルタミビルは通常の下水処理では除去あるいは分解されない:インフルエンザA型ウイルスの耐性…

高齢者の肺がん治療は非効率

American Cancer SocietyのジャーナルCancerに載った論文.「高齢者における肺がんへの医学的介入の価値:SEER-CMHSFからの結果(The value of medical interventions for lung cancer in the elderly: Results from SEER-CMHSF)」は,高齢者の肺がん治療は…

ルワンダ大虐殺と精神的無感覚

"Hotel Rwanda"(邦題:ホテル・ルワンダ)に続いて,"Shooting Dogs"(邦題:ルワンダの涙)を見た.フツ族とツチ族という部族同士の対立から始まった犠牲者が100万人と言われる大虐殺をテーマにした悲惨な話だけど,「ホテル・ルワンダ」はホテルが匿った…

「国立」が付くのと付かないのとでは大違い

WIRED JAPANの「『iPhone』の有害物質:米国立環境衛生センターが法的手続きを開始」という記事の見出しをみて驚いたけど、「米国立環境衛生センター」は間違いで、法的手続きを準備しているのはNGO団体である"Center for Environmental Health (CEH)"の方。…

ブートキャンプ

用量反応評価ブートキャンプというのが10月22〜26日にOhio州Cincinnatiで開催される.Toxicology Excellence for Risk Assessment (TERA)主催.ブートキャンプというだけあって,相当鍛えられそうだ.費用は$1500.

ダイオキシン摂取量

ダイオキシン類の摂取量の最新情報を抑えておく.厚生労働省と東京都の結果. 平成18年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について トータルダイエットスタディ.食品からの1日摂取量は「1.04±0.47pg TEQ/kgbw/日(0.38〜1.94pgTEQ/kgb…

エチレンオキシドとADAF

エチレンオキシド(ethylene oxide)のリスク評価に関してEPAと産業界でもめているらしい。EPAが2006年9月22日に発表した発がん性評価の草稿("Evaluation of the Carcinogenicity of Ethylene Oxide")では、年齢依存調整係数(age dependent adjustments f…

OMBからの覚書「リスク解析のための最新の原則」(和訳作成)

展開がややこしいので背景からおさらい. 2006年1月,OMBは"Proposed Risk Assessment Bulletin"を発表(ぼくは個人的に気に入った内容だったのだけど,数多くの批判を浴びた). 数多くのパブコメが寄せられる(省庁からのものへのリンク) 同時にNASによる…

EPAによるオゾン新基準値の提案根拠

先日書いたように,ヒト健康影響に関する第1次NAAQSは「8時間平均値で0.070〜0.075 ppmの範囲」が提案された.これまでの経緯をおさらいすると,2007年1月のStaff Paperでは,「0.080ppmをやや下回る値から0.060ppmまでの範囲」を推奨し,上限0.074ppm,中央…

EHPの2007年7月号より

Bell et al. (2007). Ambient Air Pollution and Low Birth Weight in Connecticut and Massachusetts 大気汚染と出生時体重の関係.マサチューセッツとコネティカットで1999〜2002年に生まれた約36万人を対象に,PM2.5,PM10,NO2,SO2,CO曝露(妊娠期間中…

NASによるオゾン影響の定量化と金銭評価のパネル

全米科学アカデミー(NAS)は,"Estimating Mortality Risk Reduction Benefits from Decreasing Tropospheric Ozone Exposure"(対流圏オゾン曝露を削減することによる死亡リスク削減便益の推計)というパネルを立ち上げた.リスク削減効果の定量化とその効…

進化心理学とリスクコミュニケーション

昨年12月のSociety for Risk Analysis 2006 Annual Meetingの感想に「Proceedingsが,National Academiesから出版されると聞いたように思う」と書いたが,ちょっと違ってて.Annals of the New York Academy of SciencesのVolumeとして出版されることになっ…

Society for Risk Analysis Europe 2007

オランダ・ハーグで6月17日(日)〜19日(火)に開催(link).参加する予定はないが,プログラムだけチェック.月曜朝のplenary sessionのテーマは学際的研究.議長はArie Rip氏.彼はオランダのNanoNedコンソーシアムのプログラムの1つである「テクノロジ…

SSITの2007年会

IEEEの"Society on Social Implications of Technology (SSIT)"の年会,2007 International Symposium on Technology and Society(ISTAS)はテーマが「リスク,脆弱性,不確実性,技術と社会(Risk, Vulnerability, Uncertainty, Technology and Society)…

エタノール導入によるオゾン濃度の上昇

Stanford大学のMark Z. Jacobson氏のES&T論文(Jacobson 2007)の紹介.ガソリンの代わりにE85(エタノール85%,ガソリン15%)が米国に全面的に導入された場合(2020年)のヒト健康影響を,全米とロサンゼルスを対象に推計した.E85と言っても米国ではエタノ…

「危機を警鐘する学者」の位置づけは?

自然災害パニック系の映画をDVDで立て続けに3本見た.「日本沈没」(日本2006年),「マグマ」(米国2006年),「ソーラー・ストライク」(米国2006年).危機の原因はそれぞれ,メガリスの崩壊によるプレート沈み込み加速,マグマへの負荷増大による休火山…

リスク評価と持続可能性

EPAからの依頼で,National Academy of Sciences(NAS)は,EPAのリスク評価プロセスの改善のための勧告を準備中.1983年に出たリスク評価の古典である通称Red Bookを乗り越えるという位置付けもある.新たな視点は,持続可能性(Sustainability).EPAはす…

「政策策定を通してリスクを管理する」

3月26〜29日にロンドンのWilton Parkで,"Managing Risk through Policymaking: Sensible Precaution or Fear of Trying?"(政策策定を通してリスクを管理する:思慮のある事前警戒か,試すことへの恐れか?).参加費は£1150とちょっと高め.プレゼンのタイ…